チーム作業の手順と管理のヒント
NVivoやMAXQDAを使うプロジェクトを複数人で進めたいという相談を受けることがあります。
今回は、NVivo・MAXQDAを用いたプロジェクトを、各自のPCで作業を分担しながらローカルで管理する方法を中心に紹介します。

チーム作業のためのオプションを利用する
NVivoやMAXQDAには、チームでの共同作業を支援するためのオプションが用意されていますので、まずは概要を紹介します。クラウドやネットワークを活用して、プロジェクトの共有や作業の分担・統合をよりスムーズに行えるよう設計されています。詳細は開発元のサイトをご覧ください。
NVivo Collaboration Cloud
クラウド上でプロジェクトを共有し、複数人が同時に接続してリアルタイムに分析・コーディングできるサービス >開発元のHelpで詳しく見る
※ NVivo Collaboration Server(自組織内の専用サーバーによるコラボレーション)は2025年7月現在NVivo 15では使用できません。詳しくは開発元のHelpをご覧ください
MAXQDA TeamCloud
クラウド上でプロジェクトを配布・回収し、進捗を管理しながら分担作業と統合を効率化できるチーム向けサービス >開発元のManualで詳しく見る
各自のPCで作業を分担しながらローカルで管理する
少人数のプロジェクトでは各自のPCで作業を分担しながらローカルで管理したいというケースもあります。NVivoやMAXQDAを用いたプロジェクトに複数人で取り組む場合、ファイルを配布し各自が作業した内容を後から統合する方法がよく用いられます。基本的な流れと注意点を解説しますが、具体的な進め方はご自身のチームの取り組み方に合わせてご検討ください。
基本手順
- 最初に管理者が作業用のファイルを作成
マスターとなるプロジェクトファイルを作成し、それをもとに作業を進めます。 - コピーをメンバーに配布し、各自が分析作業を実施
作成したプロジェクトファイルをコピーして各メンバーに配布します。それぞれが自分の担当範囲を分析・コーディングします。ファイル名には作業者のイニシャルや日付を入れるなどのルールを設定しておくと管理しやすくなります(例:調査_QD_20250725.nvp)。
※ ファイルの受け渡しには、USBメモリや外付けハードディスクのほか、Google Drive、Dropbox、OneDriveなどのクラウドストレージを利用する方法があります。
ただしMAXQDAの場合は、クラウドと同期されていないローカルフォルダにいったん保存してから開くようにしてください。クラウドと直接同期された場所で作業すると、データ破損の原因になることがあります。 - メンバーのファイルを管理者が回収し、手動で統合
各メンバーが分析を進めたファイルを管理者が回収し、元のファイルに手動で反映させていきます。コーディングの比較や、差異の検討をこの段階で行います。
※ 必要に応じ、2.〜3.を繰り返しながら作業を進めていきます。
プロジェクトの統合のためにプロジェクトファイルエクスポート/インポートする手順は以下をご覧ください。
共有作業をスムーズに進めるためのヒント
- 管理者を決める
マスターの管理、コピーの配布、統合を担当する管理者を決めることをおすすめします。複数のメンバーが配布や統合の作業をすると、重複したり誤って最新版を削除したりするリスクがあります。 - 作業分担を明確にする
どのファイルやケースを誰が担当するか、事前に決めておきます。 - コーディング方針の共有
コードの定義や判断基準をそろえるための方針やルールを検討、共有します。まずは1ファイルのコーディングをチームで検討して、初期のコードブックを作成してもよいかもしれません。 - プロジェクトファイル名、ファイル受け渡しのルールを統一する
作業者名や作業日を含めるなど、混乱を防ぐ命名規則を決めておきます。
また、共有フォルダをクラウド上に作成するなどファイルの受け渡し方法も決めておくと、見落としを防げます。 - 作業記録を残す
誰がどの作業を行ったかをメモ機能などに記録しておくと、あとで見直す際に役立ちます。 - ソフトウェアのバージョンは統一する
NVivoやMAXQDAは、バージョンが異なるとファイルの読み込みや機能の互換性に問題が出ることがあります。全員が同じバージョンを使うようにしてください。
※ NVivoの場合、OS(Windows/Mac)の違いに注意
Windows版とMac版では一部機能や保存形式が異なるため、OSが混在する環境での共同作業は避けたほうが安全です。OSが混在する場合は、プロジェクトファイルの変換が必要となります。変換機能はWindowsでしか使用できませんので、Windowsユーザーを管理者にすることをおすすめします。
参考: NVivo MacとNVivo Windowsでプロジェクトファイルを共有
最初にルールを決めておくことで、あとの統合作業や分析の整合性を保ちやすくなります。
参考
NVivo 15 Help – Merge/Import Projects
MAXQDA 24 Manual – How Does MAXQDA Support Teamwork