医療とケアの現象学

医療とケアの現象学
当事者の経験に迫る質的研究アプローチ

榊原哲也、西村ユミ 編
孫大輔、野間俊一、小林道太郎、西村高宏、山本則子、
福田俊子、近田真美子、守田美奈子、和田渡、村上靖彦 著

単行本 286ページ
出版社: ナカニシヤ出版
言語: 日本語
ISBN-10: 477951746X
ISBN-13: 978-4779517464
発売日:2023/8/20

書籍内容

医療やケアの実践の現場では何が起こっているのか?

医療実践に関わる医師や看護師や対人援助職、さらに医療を受ける患者や家族にとって、医療やケアに関わる実践はどのように経験されているのか。
現象学を用いた質的研究アプローチを通して、それぞれの当事者の視点から克明に描き出す。

看護を中心に現在行われている現象学的な質的研究では、「事象そのものへ+事象そのもののほうから」というこの〔現象学の〕精神が生かされている。すなわち、医療者が専門職となるために身につけ、専門職としての活動のなかで習慣化している自然科学的ないし医学的なものの見方を一つひとつ棚上げし――あるいは何らかの出来事をきっかけにそうした自身の先入見に気づかされ――、そのことによってみえてくる当事者の経験の時間的・構造的な成り立ちをできる限りありのままに記述していこうとする。そうしたなかで、その事象の記述にふさわしい方法や手続きも、事象そのものに即して選び取られていくのである。(「序章」より)

目次

序 章 医療はどのように経験されているのか
医療実践の現象学の構築を目指して
 榊原哲也・西村ユミ

1 はじめに
2 医師の視点から
3 看護師の視点から
4 対人援助職の視点から
5 患者や家族の視点から

第1部 医師の視点から

第1章 疾患と病いの現象学
ある医師の語りから
 榊原哲也

1 はじめに
2 医療の世界へ
3 患者さんを大事にする病院:患者さんを地域で生活してる人として診る
4 「医者としての私」の自覚
5 「新たな視点」

第2章 診療所で働く家庭医となる
みんなと一緒に,時間を重ね,地域のなかの一人になる
 西村ユミ

1 はじめに
2 家庭医の実践へのアプローチ
3 A医師の語り
4 まとめ

第3章 人びとのケアにおける「対話」
家庭医としての私の経験から
 孫 大輔

1 「対話」に潜む力:医師としての私の経験から
2 医療者と患者の「対話」
3 地域における「対話」
4 オープンダイアローグとの出会い
5 ダイアローグの原則を応用した診療例
6 対話における「応答」:他者の〈顔〉の呼びかけに応答する
7 おわりに

第4章 地域に生きる摂食障害者へのアプローチ
「自覚的現象学」の試み
 野間俊一

1 現象学的アプローチの方法論的問題
2 摂食障害者をめぐる状況
3 地域施設および自助グループの調査研究
4 インタビュー内容の解析方法:自覚的現象学的アプローチ
5 摂食障害者との対話
6 あらためて自覚的現象学とは

第2部 看護師の視点から

第5章 「伝える」ということ
病棟看護師の語りから(1)
 小林道太郎

1 はじめに 
2 採血データを確認する:予防のために注意すべきことを伝える
3 日常生活の手伝い:治療上の運動制限を伝える
4 体位変換:技術を後輩看護師に伝える
5 〈伝える〉ことのいくつかのパターン

第6章 「思い」を大切にする
病棟看護師の語りから(2)
 小林道太郎

1 はじめに
2 スタッフを教育する
3 患者に対する態度
4 患者の思いを大切にする
5 患者と家族の間
6 〈思い〉に関する現象学的検討
7 まとめ

第7章 あいまいな専門職の私
看護の〈専門性〉をめぐる哲学対話
 西村高宏

1 はじめに
2 貧相で,窮屈な〈支援〉観
3 〈患者〉さんからではなく,〈専門職〉から逃げた?
4 看護師のつくるたこ焼きの味:あいまいな専門職の私

第8章 「ケアの意味を見つめる事例研究」のなかでの現象学との出会い
看護のマインドと技を記述する試み
 山本則子

1 はじめに
2 「ケアの意味を見つめる事例研究」の方法を開拓したい
3 看護の人間観と現象学の類似
4 看護と間主観性
5 おわりに

第3部 対人援助職の視点から

第9章 ソーシャルワーカーの「忘れられない臨床体験」
「巻き込まれ続けること」によって生成される専門職者としての基軸
 福田俊子

1 はじめに
2 「事例」として記述される体験
3 「語り」によって記述される体験
4 考  察
5 おわりに

第10章 「心配だから会いたい」
重度の精神障がい者への多職種アウトリーチ支援における現象学的研究
 近田真美子

1 はじめに
2 看護師Oさんの実践
3 「この世界」への応答
4 「普通」の感覚
5 「孤独」から「一緒」に
6 おわりに

第4部 患者や家族の視点から

第11章 透析療法導入2年以内の患者の妻の経験
病いは夫婦でどのように分かち持たれるのか
 守田美奈子

1 はじめに
2 夫に生きてもらうための努力がもたらす自己への気づき:Aさん
3 夫婦の関係性の変化の予感:Bさん
4 病いは夫婦でどのように分かち持たれるのか

第12章 老いることと医療
現象学的老人存在論の一面
 和田 渡

1 はじめに
2 老人患者の患者自身に対する意識と態度
3 患者と医師
4 おわりに

第13章 ICUナースによるICUでの患者経験から
交錯する患者の視点と看護師の視点
 村上靖彦

1 はじめに
2 苦痛,および快の導入
3 PICS:身体の衰えと生活への想像力
4 生活への想像力:患者に聞く
5 意思決定支援

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