サイクロン発生時の調査: MAXQDAによるコードの共起を可視化した研究例

MAXQDA Research Blog 翻訳版

Guest Post by Raka Sen (Monday, June 15, 2020)

このフィールドワーク・ダイアリーは、MAXQDAでトポロジーによるインデックス化と変数のコーディングを行った前回の記事に基づいています。前回の記事を書いた後、2019年11月上旬に、フィールドサイトがサイクロンに見舞われました。学期のコースワークを終えた後、サイクロン後のデータを収集し、調査に協力してくれた方々を訪ねるため、数週間滞在する予定でシュンドルボンに向かいました。

前にも書いた通り、私の研究は、2009年のサイクロン・アイラがシュンドルボンでの塩分濃度の上昇のきっかけとなったことを理解するために、過去のデータを収集して使用していました。この冬、例えば毎日の後始末がどれほど大変かなど、これまでの研究で得た発見が紙面にとどまらず現実に飛び出すのを目の当たりにしたのは、非常に強烈な体験でした。

サイクロン後の清掃作業

上の写真は、サイクロン後の清掃作業がいかに大変なものであるかを示す一例です。この男性は嵐の後、毎日落ちた枝の山を刈り上げていますが、自分の土地をきれいにするにはまだ長い道のりがあります。彼は、枝を切った後、堤防の上に置いて潮に流されるようにしていると話してくれました。しかし、この作業をしなければ、次の年には植物が育たないのだそうです。

村人が枝を取り除かなかった土地はどうなるのか

次の写真は、枝を抜く作業をしなかった場合の土地の様子の一例です。このままでは、残った植生は枯れてしまいます。この植生は、日々の暑さや天候からの避難場所であり、暴風雨から守ってくれるものでもあります。

サイクロンの後には多くの木を伐採しなければならない

上の写真のような木は支柱などで支えることもできないため、そのままにしておくか、伐採するかの難しい決断を迫られます。2009年のサイクロン・アイラが発生したとき、私のインタビューに答えてくれた人たちの多くは、大きな木がなくなったことで夏の暑さと冬の寒さの両方が厳しくなったと話していました。アイラから11年経った今、これらの木は周囲で一番大きなものとなり、住民に避難場所を提供してくれいたそうです。

しかし、嵐の影響の中で最悪なのは、稲作がどれだけ被害を受けているかということです。シュンドルボンでは米は毎日の食生活の主食です。さらに多くの人々は、家を建て直さなければならないでしょう。

荒廃した稲作地

下の写真は、家の損傷がどのようなものかを示しています。変化の多い地勢のために、シュンドルボンの集落は伝統的に、そして意図的に、長持ちするようには作られていません。そのため、シュンドルボンの人々は周囲の素材から素早く家を建てるエキスパートです。

しかし、住宅の建設は季節を選びます。一般的に、最も暑い月の前が、住宅の建設に適した季節とされています。その理由は、暑い時期に泥の家をレンガのように固まった構造に「焼く」ためです。シュンドルボンの家は、普通泥でできています。この種の家は比較的早く建てることができます。通常は春に建てられ、その泥が夏の間に十分固まり、冬と雨の月を乗り切きれるようになっています。

サイクロンの影響を受けた泥の家

私のインタビューでは、泥の中に含まれる塩が乾燥の仕方を変えていることが語られていました。また、毎年の雨が増えることで、モンスーンの季節には家が常に湿った状態になっていたとのことです。アイラは夏に発生し、多くの家族は都合の悪い時期に家を建て直さなければなりませんでした。回答者の中には、このために家が乾くことがなく、新しい家の安定性や寿命を心配している人もいました。

データの意味を理解する: コード共起の可視化

このフィールドワーク・ダイアリーでは、自分のデータを伝えるのに役立つグラフィックを MAXQDA の図解ツールを使って作成する方法を紹介します。私が特に便利だと感じたツールは、「コード間関係ブラウザ」と「コードマトリクス・ブラウザ」の二つです。

MAXQDA のコード間関係ブラウザは、コード同士の関係を区別するのに役立ち、 コードマトリックス・ブラウザは、それぞれの特定のコードにどれだけの文書が 割り当てられているかを知ることができます。この 2 つの視覚的なツールを一緒に使うことで、自分のデータの傾向を理解し始めることができます。

コードマトリックス・ブラウザ

上の図は、MAXQDA のコードマトリックス・ブラウザを使った私の分析のスクリーンショットです。列は文書を表しており、それぞれにインタビュー対象者にちなんた名前がつけられています。コードは行にリストされています。以下のようにデータを分析しました。

  1. 人々がサイクロンについて議論しているインタビューのセクション全体を大きい塊としてコード化した。
  2. 続いて、サイクロンとその中での影響をどのように説明しているかでコード化した。例えば、サイクロンは「昼休みに襲ってきた」、そして「稲作に影響を与えた」。
  3. マトリックスの四角の大きさから、私のインタビューでは米について非常に頻繁に言及されていることがわかる。私が選んだインタビュー対象者の中では、サイクロンとその影響について話すとき、主に米と塩分の侵入について言及しているが、魚や恐怖、家の再建についても言及している回答者がいることがわかる。
  4. これらの結果から、サイクロンは塩分の浸入をもたらす触媒として見られているだけでなく、サイクロンが生み出すミクロな日々の変化を通してシュンドルボンの住民に理解されているという結論に至った

おわりに

気候変動とサイクロンは、残念ながら、今後数年の間シュンドルボンを襲い続けるでしょう。例えば、私が2019年11月のサイクロン・ブルブルについてのこの草稿を提出する直前の今週(2020年5月)、サイクロン・アンパンがシュンドルボンを直撃し、これまでで最悪のサイクロンの1つとなりました。激化を続け地域を打ちのめすような極端な天候が及ぼす影響を理解するために、私は今後も研究を続けていくつもりです。

私が質的研究者として最も重要だと学んだことの一つは、データの収集と分析の間の変化に柔軟に対応できることですこれは、現場に戻るたびに私の理解をシフトさせる反復的なプロセスです。MAXQDAは、このような柔軟性を可能にしてくれる素晴らしいソフトウェアで、既存のデータの中の変数間の新しい関係を簡単に調査することができます。

MAXQDA と #ResearchforChange Grant に感謝します。MAXQDAチームと一緒に仕事をすることを強くお勧めします。MAXQDAは、私の成果と方法を共有するためのプラットフォームを提供してくれただけでなく、私の質的データ分析のスキルについても多くのサポートをしてくれました。

About the Author

Raka Sen is a Ph.D. student in Sociology at the University of Pennsylvania, USA. The fieldwork phase of her research project titled “Adaptation Labor: Gender, Work, and Climate Change in the Sundarbans” is currently underway in rural Sundarban villages in Bangladesh. Her project will continue as she completes her dissertation in the next few years and hopefully beyond that. You can continue to follow Raka’s research journey and publications at rakasen.com and you can donate to relief funds at any of the many of the incredible organizations doing the on-the-ground work:

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