健康の社会的決定要因の理解:WHOの政策文書をコーディングして中核的なテーマを明らかにする

MAXQDA Blog 翻訳版

Monday, October 18, 2021

私たちは健康について医学的な観点から考えることが多いのですが、健康は政治的、社会的に決定されるものでもあります。健康は、教育、住宅、雇用、近隣環境、ケアへのアクセスなど、多くのことに関連しています。健康の社会的決定要因は重要ですが、必ずしも具体的に定義されているわけではありません。MAXQDA は中核的なテーマを特定するのに役立ちます。

この投稿は、政策文書のコーディング(このプロセスは、最初は困難なものでしょう)にソフトウェアを使い始めるMA/Ph.D.の学生を対象にしています。この投稿の目的は、私が文書を体系的に整理し、コーディングし、そして主要なテーマを強調するために再コーディングする方法を読者に紹介することです。後のブログ投稿では、これらのコードをさらなる分析のためにコードマトリックスブラウザと組み合わせて分析する方法を紹介する予定です。

背景

このプロジェクトでは、「健康の社会的決定要因」(SDH)を分析し、公衆衛生政策の中心的な原則を理解するためにMAXQDAの機能を使用しています。このブログ投稿は、2021年のInternational Studies Association(ISA)会議で発表されたカンファレンス論文をもとにしています。その中で、以下のリサーチクエスチョンを提起しました:グローバルな視点と米国連邦の論述において、SDHはどのように論じられてきたのか?なぜSDHという概念は、政策課題に焦点を当てる傾向のあるエリート政治家による健康政策の議論から大きく欠落しているのか?これらの問いに答えるために、私はWHOの政策文書を分析し、それに加えて大統領の健康に関する談話の分析も行いました。このブログ投稿では、公的報告書を扱うために使用したMAXQDAの機能に焦点を当てています。

健康の社会的・政治的決定要因とは?

SDHだけでなくPDH(健康の政治的決定要因)も非常に重要ですが、それ自体が非常に広い広概念でもあります。SDHはしばしば「人々が生まれ、成長し、生活し、働き、老いるための条件」と呼ばれ、総合的な健康と福祉に影響を与えます(WHO、2021年)。PDHは、「異なる政治体制や文化、統治のレベルにおいて、異なる権力構造、制度、プロセス、利益、イデオロギーの立場がどのように健康に影響を及ぼすか」という要素を含んでいます(Kickbusch、2015年)。言い換えると、この広範な枠組みによって、公衆衛生政策を超えて健康について考えることができます。健康は単に医療だけでなく、政治的で社会的な側面も含んでいます。健康は教育、住宅、地域、医療へのアクセスなどと関連しています。近年、健康の社会的・政治的決定要因が注目されています(Artiga&Hinton、2018年;Dawes、2020年)。

SDHはしばしば、健康の公平性と関連して議論されます。SDHは必ずしも具体的に定義されず、多くの異なる定義や解釈が存在し、非常に広範で曖昧な概念となっていいるため、問題を引き起こす可能性があります(Raphael、2011年、Table1: Various conceptualization of the SDH参照)。

使用したMAXQDAの具体的な機能

私の論文では、SDHに関する論述を調査し、WHOの政策文書を分析して主要な論述を抽出し、国家政府の論述を比較・対照するための予備的なフレームワークを提案しました。MAXQDAは以下のように使用されました:

  1. セットの作成(文献レビューやコーディング対象の文書をセットを使用して整理する)
  2. コーディング(政策報告書のコーディング)- In-Vivoと新しいコードを使用してのコーディング
  3. メモ機能(特定のコードに対してメモを作成する)

プロジェクトの開始

私の研究は、政策研究と公衆衛生の交差点に焦点を当てています。このプロジェクトは、以下の問いから始まりました:社会的な健康の決定要因(SDH)は、国際的なレベルでどのように理解されているのか?また、米国の連邦レベルではどのように理解されているのか?この研究は、米国連邦レベルでの長年にわたる健康政策分析から発展し、SDHの研究と革新的な質的および混合方法論的アプローチへの関心が生まれたことに基づいています。

このプロジェクトの目標は、国際的な高レベルの政策文書におけるSDHの意味を理解することでした。同時に、このプロジェクトは異なる国やWHOの間の論述のギャップに関するさらなる研究の可能性を開いたのです。なぜ一部の国が社会的な健康の決定要因の枠組みを採用しているのか?一部の国がこの枠組みを採用していないのはなぜか?これはSDHの定義に関する明確さや合意の欠如と何か関係があるのか?

出発点は文献レビューと、その後、WHOが公的な報告書や文書でSDHをどのように概念化または議論しているかを分析するための政策文書を選択することでした。

研究方法

私は、解釈的政策分析(Browne et al、2018年)に基づく質的アプローチを用いました。また、比較政治学の観点からの健康格差に関する先行研究も参考にしました。Lynch(2019年)は、健康格差に関する政策文書を収集し、問題がどのようにフレーム化されているかなど、さまざまなフレームについてコーディングしました。同様のアプローチを用いて、私はWHOの4つのSDHに関する政策文書の論述を分析しました。

最初に、社会的な健康の決定要因に関するWHOのウェブサイトから文書をダウンロードし、セットに整理しました。次に、政策文書を読み、主要なテーマを帰納的にコーディングしました。その後、In-Vivoでこれらのテーマの多くをコーディングするために、もう1ラウンドのコーディングを行いました。

分析方法論

4つの報告書においてWHOがどのようにSDHを議論しているか、つまり、帰納的に浮かび上がる論述、テーマ、または概念を評価するために、質的な内容分析を行いました。以下の表は、テーマと論述の最初のラウンドの帰納的なコーディングを説明しています。

Policy document typeSpecific document analyzedThemes or discourses
WHO reports1. Action on the Social Determinants of Health: Learning from previous experiences. Social Determinants of Health Discussion Paper 1 Geneva 2010. (World Health Organization, 2010c)-Narratives
-Market-based approaches
-Knowledge/Power
WHO reports2. A Conceptual Framework for Action on the Social Determinants of Health. Social Determinants of Health Discussion Paper 2.Geneva 2010. (World Health Organization, 2010a)-Technology-based solutions
-History of SDH
-Equity/Human rights
-Power
WHO reports3. Monitoring social well-being to support policies on the social determinants of health: the case of New Zealand’s “social reports/te pūrongo oranga tangata” Social Determinants of Health Discussion Paper 3 (Pega et al., 2010)-Comparisons with other countries
-Methods and consultations (solutions)
-Rights/right to health
WHO reports4. Public Health agencies and cash transfer Programmes: making the case for greater involvement. Social Determinants of Health Discussion Paper 4 (World Health Organization, 2010b)-Cash transfer systems (solutions)
-Welfare states
-Intersectoral approaches

以下のスクリーンショットは、テーマと論述をIn-Vivoでコーディングした、第2ラウンドのコーディングの様子です。

図1: メモ機能を使ってコードやテーマを記録する
図2: In-Vivoでコードカテゴリーを作成し、政策文書をコーディングする
図3: 文献調査、他の政策文書、WHOの政策文書をセットで整理する

結論

MAXQDAを使用しWHOの報告書を主要なテーマにコーディングすることで、公衆衛生のこの広範なカテゴリーがどのように理解され、伝えられているかを理解できます。私が最初のラウンドでWHOの公開討論文書をコーディングしたところ、現金給付、福祉国家、技術ベースのソリューションに強く焦点をあてていることがわかりました。これは実践的で革新的な例を示しており、現金給付や福祉制度が健康にとって中心的であり、健康を社会的および政治的に決定されるものと捉え続けることに寄与しています。これらのコードは理論的なカテゴリー(権力と人権)にも分類することができます。私はリサーチクエスチョンで、SDHに取り組む政府の構造と、SDHが健康政策(および健康政策論述)においてどのように問題視されているかを問いました。今後の研究に組み込む提案としては、世界保健総会の討議や特定の政府機関のSDHの定義の概要を含めることで、国家レベルの例に焦点を当てることです。これにより、これにより、健康政策に関連する文書の分析を継続するための舞台が整いました。

References

Artiga, S., Hinton, E. (2018). Beyond Health Care: The Role of Social Determinants in Promoting Health and Health Equity. Kaiser Family Foundation. https://www.kff.org/racial-equity-and-health-policy/issue-brief/beyond-health-care-the-role-of-social-determinants-in-promoting-health-and-health-equity/

Browne, J., Coffey, B., Cook, K., Meiklejohn, S. and Palermo, C. (2018). A guide to policy analysis as a research method. Health Promot Int. 2019 Oct 1;34(5):1032-1044. doi: 10.1093/heapro/day052. PMID: 30101276.

Dawes, D. (2020). The Political Determinants of Health. Johns Hopkins University Press.

Kickbusch, I. (2015). The Political Determinants of Health – 10 Years on. BMJ 2015; 350:h81 doi: 10.1136/bmj.h81

Lynch, J. (2019). Regimes of Inequality The Political Economy of Health and Wealth (New York: Cambridge University Press, 2019)

Pega, F., Valentine, N., Matheson, D., & World Health Organization. (2010). Monitoring social well-being to support policies on the social determinants of health: The case of New Zealand’s ‘Social Reports/te pũrongo oranga tangata.’ World Health Organization.

Raphael, D. (2011). A discourse analysis of the social determinants of health. Critical Public Health, 21:2, 221-236, DOI: 10.1080/09581596.2010.485606

World Health Organization. (2010a). A conceptual framework for action on the social determinants of health: Debates, policy & practice, case studies. http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/44489/1/9789241500852_eng.pdf

World Health Organization. (2010b). Public Health agencies and cash transfer Programmes: making the case for greater involvement. Social Determinants of Health Discussion Paper 4 http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/44489/1/9789241500852_eng.pdf

World Health Organization. (2010c). Action on the social determinants of health: Learning from previous experiences. World Health Organization.

World Health Organization. (2021). Social determinants of health.

About the Author

Betsy Leimbigler, Ph.D.is a postdoctoral researcher in health equity and social innovation at the University of British Columbia Okanagan (UBCO) in Kelowna, BC, Canada. She earned her Master’s in political science at the University of Ottawa, Canada, and her doctorate in political science 2020 at the Free University of Berlin. She has taught courses on the politics of health, policy analysis, and public health at the John F. Kennedy Institute and at Bard College Berlin. She uses MAXQDA for several research projects, including her Ph.D. project, where she analyzed the frames used by political elites and media outlets surrounding health care reform.


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