MAXQDAを用いてインド・オディシャ州における人間とゾウの相互の影響を理解する – フォーカスグループ分析の例

MAXQDA Research Blog 翻訳版

Guest post by Medha Nayak (Monday, July 13, 2020)

近年、インド東部の州であるオディシャでは、人間とゾウの致死的な遭遇が話題になっています。過去5年間(2014年から2019年の間)のメディア報道によると、密猟や事故など様々な理由によるゾウの死が379件、ゾウによる人間の死412件、人間の負傷310件が報告されています(Senapati, 2020; Maharana, 2019)。

人間がゾウの移動を追跡する – 好奇心旺盛な人々と激しい怒りを表すオスのゾウ

人間とゾウの遭遇は、人間が日常的に使用する様々な資源を得るために森に入った時や、ゾウが森から出た時に起こりやすくなります。通常ゾウは、森林の劣化、生息地の分断、採掘などの人間の干渉を受けたり、他の食料源に惹かれたりした場合に森林の外に出ていきます(Lenin & Sukumar, 2011; Fernando, et al., 2008; Sar & Lahiri-Choudhury, 2009)。そして、人間の居住地域にこっそりと入り込み人々の日常生活に悪影響を及ぼします。そして、人々はその報復としてゾウに危害を加えることになります。

ゾウは家を破壊したり作物を踏み荒らしたりしている

この原因と結果の関係は、課題の軽減に人間がより大きな役割を果たせる可能性を示唆しており、よって彼らの視点を理解することが重要といえます。この研究目的のために、私はオディシャ州のバラソール地区を研究対象地域として選びました。主に収穫期になると、近隣の州からゾウがバラソールを訪れ、ゴパルプルやティンコシアの森林を占拠します。

森林局の記録によると、2010年から2018年の間に、渡りゾウが2632.7エーカーの作物に被害を与え、675軒の家屋を破壊し、6人の人間の命を奪ったことが明らかになっています(バラソール野生生物課の報告書より;Udgata, 2014; Mishra & Nayak, 2014)。このような状況の中で、このプロジェクトでは、ゾウに関する利害関係者、つまり地元のコミュニティの語りをまとめようと試みています。

MAXQDAによるデータ分析 – 複雑なコンセプトに対応する使いやすいツール

インド・オディシャ州における人間とゾウの関係を理解するためにMAXQDAをどのように使用したかを紹介します。MAXQDAは、データを解釈して、見やすい形に整理するのに役立ちました。私たちが行った手順は以下の通りです。

  1. バラソール地区の最もゾウの被害を受けた12の村をサンプルとして選定。
  2. サンプルの村でフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)を開催。
  3. 各村のデータを書き起こし、MAXQDAの[文書システム]にインポート。
  4. すべての文書を[文書ブラウザ]で一行ずつ読む。
  5. 関連するテキストにコードを割り当てる
  6. コードの説明や、考え・観察・洞察の記録にメモを利用する
  7. [コードシステム]でテーマを分類し、コードとサブコードを整理する
  8. [コードの一覧表示][コードマトリックス・ブラウザ]、[インタラクティブな引用マトリクス]機能を使用してデータを比較する(下記参照)。
  9. MAXQDA の[図解ツール]の[MAXMaps] 機能を使って、人間と象の相互作用の概念を示す(下記参照)。

コードの一覧表示

データ分析の目的を果たすために役立った機能を以下に示します。

コーディングの段階では、重要なテーマやアイデアを特定し、それらにコードを割り当てるようにしました。サンプル村ごとの12の文書をすべてコーディングした後、[コードシステム]でコードを整理しました。例えば、「Manifestation of conflict(紛争の顕在化)」をコードとし、そのコードを説明する項目「elephants destroy our crops and vegetation(ゾウが農作物や植物を破壊する)」「elephants break house(ゾウが家を壊す)」「elephants kill/injure humans(ゾウが人間を殺す/傷つける)」などをサブコードとしました。

サブコードは、さらに詳細な内容を示す下位階層のサブコードを持ってします。すべての文書におけるコードの出現頻度は[コードシステム]ウィンドウに表示され、コードと文書のアクティブ化機能により、データの検索が容易になり、興味深いデータの比較ができるようになりました。

スクリーンショット1 – コードの一覧表示

コードマトリックス・ブラウザと
インタラクティブな引用マトリクス

MAXQDAのコードマトリックス・ブラウザを使って、各テーマやコードが村々でどのくらいの頻度で現れているかを確認しました。次に、これらの結果を、インタラクティブな引用マトリックスでまとめられた語りで確認しました。この機能により、村ごとの認識の違いを理解することができました。

スクリーンショット2 – コードマトリックス・ブラウザ
スクリーンショット3 – インタラクティブな引用ブラウザ

メモ

MAXQDAのメモは、頭をよぎったアイディアや省察を記録するのに役立ちました。文書を閲覧しながら、[文書内のメモ]を作成しました。このメモを分析することで、テーマやカテゴリーの説明をすることができます。

スクリーンショット4 – メモ

MAXMaps

MAXMapsのおかげで単調な作業となりがちな文章や数字の分析から一時解放されました。私は、MAXQDAの[コード-サブコード-セグメント・モデル]を使い説明図をいくつか作成しました。

スクリーンショット5 – MAXMaps

調査結果

地域住民は、人間とゾウの関係を悪化させている要因として森林伐採とゾウの生息地における食糧資源の不足を挙げています。彼らは、人間の居住地や農地がゾウの生息地や移動ルートに近接しているため、ゾウに対する脆弱性が高いと考えています。

人々はゾウによる農作物や家屋の被害を主な問題と考えています。彼らは様々な方法でゾウの侵入を防ぎ、追い払おうとしており、その中でも最も効果的なのはゾウの侵入を防ぐ溝と火を使うことだと考えています。

ゾウが生息する森林に隣接した村でのFGD

さらに、森林の保護と植林がゾウの将来を守ることになると示唆しています。また、この地域では、ゾウの文化的な重要性についてかなり肯定的な認識を持っているようですが、経済的な損失によってそのような文化的なつながりが損なわれています。

最後に、本研究では、ゾウの生態的・文化的意義を維持し、人間に対する耐性を高めるための意識を広めること、衝突を最小限に抑えるためのより良い緩和アプローチを実施すること、さらに象の保護にインセンティブを与える試みを行うことを提案しています。


References

Fernando, P., Kumar, M., Williams, A., Wikramanayake, E., Aziz, T., & Singh, S. (2008). Review of human-elephant conflict mitigation measures practiced in South Asia . Vaud, Switzerland: World Wide Fund for Nature.

Lenin, J., & Sukumar, R. (2011). Action Plan for the Mitigation of Elephant Human Conflict in India. Final Report to the U.S. Fish and Wildlife Service. Bangalore: Asian Nature Conservation Foundation.

Maharana, S. (2019, March 28th). 87 elephant deaths in Odisha, highest in a decade. The New Indian Express. Retrieved May 05, 2020, from https://www.newindianexpress.com/states/odisha/2019/mar/28/87-elephant-deaths-in-odisha-highest-in-a-decade-1956962.html

Mishra, S. R., & Nayak, A. (2014). Human-Elephant Conflict by Inter-state migratory elephants(Elephas maximus) in Baripada & Balsore, Odisha, India. International Journal of Fauna and Biological Studies, 1(6), 19-22.

Sar, C., & Lahiri-Choudhury, D. (2009). Project: Elephant-Human Conflict in Asia, report on Orissa-India(Part-1), State Report(April 1992-June 2000). Kolkata: Education Centre.

Senapati, A. (2020, April 7). Elephants killed 527 humans in Odisha in 6 years: Wildlife group. Down to Earth. Retrieved May 05, 2020, from https://www.downtoearth.org.in/author/ashis-senapati-2149

Udgata, H. (2014). Migratory Elephants in Nilgiri-Balasore. Odisha Review(July), pp. 73-78.

About the Author

Medha Nayak is a PhD candidate at National Institute of Science Education and Research-HBNI, Odisha, India, in their School of Humanities and Social Sciences. Her research project is titled “Understanding human and elephant interactions in northern Odisha”.

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