質的研究と記述の厚み

M-GTA・事例・エスノグラフィー

質的研究の記述の厚み
M-GTA・事例・エスノグラフィー
木下康仁 著
四六版 314頁
出版社: 弘文堂
言語: 日本語
ISBN 978-4-335-55131-4
発売日: 2009/11/1

書籍内容

「質的研究法」の実践的な入門書

技法や理論的な説明だけでなく、具体例を交えて説明してほしい、という読者の要望にこたえる、待望の教材。
質的研究にはさまざまな立場や方法があり、多様性に大きな可能性があります。本書は、M-GTA、事例、エスノグラフィーによる記述、という3つの異なった種類の作品例を通して、質的研究とは何か、どのように実践するのか、など学習者が知りたいことをわかりやすく解説します。
知識だけではなく何を同時に考え始めなくてはならないか、質的研究は技法としてのみ成立するのか、研究する具体的人間の視点をどのように位置づけるか、など学習者の立場にたった解説が、知識の理解だけでなく、実感することの重要性を伝え、自分の判断に自信がもてるように読者を導きます。

目次

序章 記述の厚みの実践
  本書の構成と読者の想定
  何気なく読める、と、何気なく読ませる
  記述の厚みについて
  本書の読み方
  第1章 作品・M-GTA 「老夫、老妻ヲ介護ス」について
  第2章 作品・事例 「ソレントへ――Mrs. A 最後の日々」について
  第3章 作品・エスノグラフィー 『スウェーデン思索の旅――成熟社会と高齢者ケア』について

第1章 作品・M-GTA 「老夫、老妻ヲ介護ス」
  第1節 はじめに
  第2節 介護日課の構造化
     2-1 介護合わせの生活リズムと介護者スキルの蓄積
       2-1-1 直接的介護行為と介護上の困難
           直接的介護行為:
           介護上の困難:
       2-1-2 妻行為の確保、必要行為の合理的工夫、介護関連記録化と健康トレードオフ
           妻行為の確保:
           必要行為の合理的工夫:
           介護関連記録化:
           健康トレードオフ:
       2-1-3 自分のための行動と介護のための中断
           自分のための行動:
           介護のための中断:
       2-1-4 予測対応と予期せぬ失敗
           予測対応:
           予期せぬ失敗:
       2-1-5 外部限定支援と応援親族欠如
           外部限定支援:
           応援親族欠如:
     2-2 サービス合わせの生活リズムと介護者スキルの蓄積
       2-2-1 サービス独自指定と介護保険への不満、ヘルパー・ナース関係不安定
           サービス独自指定:
           介護保険制度への不満:
           ヘルパー・ナースとの関係不安定:
       2-2-2 妻不在時の心配
     2-3 介護者スキルの蓄積
       2-3-1 妻の発病による生活混乱と“それからですね”
           “それからですね”:
       2-3-2 経験ナシからの出発と家事経験アリ
           経験ナシからの出発:
           家事経験アリ:
  第3節 改めて夫婦であること
     3-1 要介護妻の受容困難
     3-2 妻を慮ると妻への思い
           妻を慮る:
           妻への思い:
     3-3 愛情文脈化
  第4節 砂時計の時間感覚
           施設入所へのためらい:
           やり残し願望:
  第5節 分析結果の実践的活用に向けて
           コアのカテゴリー関係からみると……:
           【介護日課の構造化】からみると……:
           〈介護合わせの生活リズム〉と〈介護者スキルの蓄積〉の関係……:
           〈サービス合わせの生活リズム〉と〈介護者スキルの蓄積〉との関係……:
           【改めて夫婦であること】からみると……:
           【砂時計の時間感覚】からみると…:

第2章 作品・事例 ソレントへ――Mrs. A、最後の日々
  第1節 はじめに
  第2節 ソレントの街
  第3節 ソレントでのMrs. A
  第4節 不本意な転居
  第5節 心身分離
  第6節 ホステルでのMrs. A
  第7節 人格の老衰
  第8節 ホステルに戻る
  第9節 最後の日々
  第10節 葬儀
  第11節 ソレントへ

第3章 作品・エスノグラフィー 『スウェーデン思索の旅――成熟社会と高齢者ケア』
  第1節 はじめに
  第2節 高齢者ケアの現実
     2-1 ベアナドッテゴー
     2-2 “It doesn’t work!”
     2-3 モーテンスルンドとヘルパーたち
  点描1 初冬ルンド
     2-4 ルンド市のイブニング・パトロール
           小さな浮き島と生活の土着性
           在宅の試験期間
           どこまでもある本人の意思
           今日一日分の会話
           “待ち人”と“不在”によるケア
  点描2 ホームステイと女主
     2-5 クリッパン市のアプローチ
           手作りの小さな福祉社会
           実践を支えてきた言葉
           森の中の一軒家とトトロの猫バス
  第3節 平和と福祉の関係
     3-1 レジスタンスと老い
           強制収容所からの救出と2001年の意味
           対立、排除からの共存の思想へ
           平和国家スウェーデンの影
     3-2 不在と不死、そして平和の代価
           スウェーデン・パスポートとユダヤ人の救出
           墓標の系譜
     3-3 中立の意味
           第2次世界大戦と高齢者ケア
           中立維持のプロセス
           血を流さないための絶えざる戦い
  第4節 福祉社会の昨日から明日へ
     4-1 近代化以前のスウェーデン
           貧しき時代からの遺産
           共同体と相互扶助のルーツ
     4-2 社会サービス法とケアの思想
           社会サービス法の内容
           社会サービス法の特性
           ノーマライゼーションの意味
           全人的アプローチと自己決定
           社会参加の意味
     4-3 ミネストルンド――共同匿名墓地
           葬送方式と墓地形態への関心
           共同匿名墓地の普及
           尖鋭化した個人主義と匿名性
     参考文献
     おわりに

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