戦略的先見性の研究にMAXQDAを使用 – 組織の政策と実践の分析

MAXQDA Research Blog 翻訳版

Guest post by by Matthew H. Loxton, a Principal Healthcare Analyst and Professional MAXQDA Trainer. (Monday, February 17, 2020)

組織とは本来、永遠に存続するはずのものです。

組織は病気にかかることもなく、自己修復の限界もなく、必要に応じて無限に形を変えることができるので、創設者より長生きするはずです。しかしながら実際には、創業者より長生きする組織は稀で、早い段階で枯れたり、早死にしたりしています。

組織の崩壊や解体の主な原因の一つは、衝撃に対処できないこと、つまり、不確実な未来を見通す力の欠如と、その影響に対処するためのレジリエンスの欠如です。

MAXQDAを使って未来を予測し、利益を得る

未来を予知することは不可能ですが、起こるかもしれないさまざまなパターンの未来を想像し、それを記述することは不可欠です。戦略的先見性(Strategic Foresight)の研究には、シグナルを収集し、見通しを立て、その領域で起こりえる将来を記述することが含まれています。私たちは「確率の円錐形(cone of probability)」を使用しまた。これは、次にあげるようにHouston Framework Four Alternate Futures modesを用いて、長い地平線において起こり得る変化を検討したものです。

  • ベースライン (Baseline): 領域内に存在する現在の軌道を維持する力
  • 調節された平衡 (Adjusted Equilibrium): 新たなベースラインの中で組織を保持するために方向転換、適応、または妥協を必要とする組織の主要な課題
  • 変化(Transformation): 「最良のシナリオ」の破壊および根本的な改善を引き起こす領域の本質的な変化
  • 崩壊(Collapse): 組織が機能不全とエントロピーの状態にスパイラルする領域の変化。ネガティブな混乱の結果、「最悪のシナリオ」に陥る

ヘルスケア分野における戦略的先見性分析

組織が戦略的先見性を持つためには、起こりうる複数の未来像、変化の力、そこに至るシナリオを分析する必要があります。ヘルスケア組織は戦略的先見性を、事業計画、研究開発投資、人事戦略におけるリスクや課題、そして好機を見出すために用いています。戦略的先見性に含まれる変化のシグナルやトレンド、強い影響を受ける可能性のあるイベントを分析することができなければ、将来的な需要を満たす進化を遂げることができず、また、社会の無秩序化や衰退的な局面、外部からの衝撃に対してより脆弱になるでしょう。

戦略的先見性は、リスクの特定、回避および軽減に必要なツールとして機能し、組織のレジリエンスを高めます。私たちは代替未来像を以下のフェーズを経て構築します:

  1. フレーミング (Framing)
  2. スキャン (Scanning)
  3. 変化の力の特定 (Identifying Forces of Change)
  4. 代替未来の記述 (Describing Alternate Futures)
  5. シナリオのインプリケーション分析 (Performing Scenarios Implications Analysis)

ステップ1. フレーミング

領域を明確にしコードシステムを構築するために、MAXQDA の「文書の声」を浮かび上がらせる機能と、コードを作成したりマージしたりする柔軟性を利用しました。私たちは、ダブリン・コア(Dublin Core)の中からヘルスケア業界にマッチすると思われるものを選りすぐって、 初期のコードシステムを構築しました。以下は私たちの初期のコードシステムです。

次に、顧客の社内方針や実践文書600件以上と、数十件の業界文書をインポートし、MAXDictioの[単語の組み合わせ]機能を使用して、頻出するテーマを特定しました。そのアプローチは、あるフレーズが社内文書の中で頻繁に使われている場合、文書コーパスの「声」が組織が最も気にしていることを伝えてくれているというものでした。

同様に、業界文書の中で頻繁に繰り返されるフレーズは、その業界の組織が何を気にするべきかを教えてくれます。語の組み合わせと頻出語上位20をコード化した「Phrase Parent (フレーズ:語の組み合わせ)」(図1)と「Single Word Parent (単語)」(図2)を以下に示します。

 

図1: 語の組み合わせコードリスト
図2: 単語のコードリスト

2 つのコードリストは、顧客企業や業界に特有の「文書の声」を表しており、MAXQDA の MAXMaps 機能を使い、テーマ別のクラスタリングを実行してコードをクラスター化したり、マージしたり、分割したりして、最初のコード分類法にたどり着きました(図 3)。このようにして、単語とフレーズのリスト、ダブリン・コアコードから選択したものを使用し、「Accepted Code(ほとんどの人が正しいと思えるコード)」のコードリストに体系的に整理されました。

図3: テーマ別クラスタリングコードシステム

この段階で、各コードとそのスコープを定義したメモを含む「Accepted Code」をエクスポートし、このフレーミングコードシステムを新しいプロジェクトにインポートしました。この新しい空のプロジェクトが次の段階の基礎となりました。

ステップ2: スキャン

変化の力のシグナルを精査することは、ヘルスケア関連あるいは概念的に近しい新しい社内文書、業界レポート、インターネットのウェブページを監視する継続的かつ反復的なプロセスです。私たちは2つのAIニュースアグリゲータを訓練して、ヘルスケアのインターネットページを取得しました。そして、クライアントのミッションやドメインにメッセージが関連する見出し、リード、公開されている情報へのURLを提供しました。

その週ごとのリストから、シグナルの検索に最も関連性が高いと判断したページを訪問し、MAXQDA Web Collector(図5)を使用して、最も関連性の高いシグナルを各収集週のドキュメントグループに整理しました(図4)。同様に内部の PDF 文書は、通常の方法で文書としてインポートしています。

図4: 週ごとの文書グループ
図5: Web Collector

文書のコーディングはフレーミング分類法を使用しました(図6)。各文書のメモには、文書内の核となる「ストーリー」のリードやパラフレーズ、そして顧客にとっての意味や含意の短い分析を記録しました。

コーディングの経験を使用して、私たちは定期的にフレーミングコードシステムを調整し、再び分割、マージ、新しいコードの追加、または廃止されたコードを削除しました。文書内のコードに分析とリードを紐づけておくことで、必要に応じて、さまざまな条件で抽出したリストをエクスポートしたり、ソートや検索、注釈をくわえたりすることができます。また、重要な詳細をすべて一か所で管理することで分析が容易になりました。

図6: コーディングプロセス

この出力と MAXQDA のコードマトリクス・ブラウザ機能の使用を組み合わせることで、変化の力の分析を支援する情報を抽出、エクセルシートにエクスポートして、後のシナリオフェーズのための資料を得ることができました。

ステップ3: 変化の力

私たちは、前段階のコーディング(図7)とMAXMapsを使用して、「変革の原動力」とも呼ばれる変化の力(Force of Change)の視覚的なマップを開発しました(図8)。変化のシグナル、特に弱いシグナルを組み合わせて、新たな課題を浮かび上がらせています。

MAXMapsはまた、チームが対話的に複数のレベルの分類を構築することを可能にしました。コードは最初の3~4レベルの詳細を形成し、シグナルの詳細やクラスターについてブレインストーミングを行い、さらにいくつかのレベルを開発することができました。

図7: コーディングレポート
図8: MAXMapsの3レベルの変化の力

ステップ4: 代替未来

先見性の専門家は、未来を単一値の予測としてではなく、(シナリオを特定のインスタンスとして)選択肢のセットとして記述します(Bishop, 2011)。この複数の結果を考慮したアプローチを用いて、私たちは、選択肢の中で最も妥当な範囲内に収まるように未来をモデル化しました。主要な作業はすべて MAXQDA で行われていたので、代替未来のコードは、コード付きセグメントを質的分析に使用できる形ですでに存在していました(図 9)。

これらの代替未来 (Alternate Future)が、グループ化され、文書メモやコード関係から集められた資料から十分記述された後、意味のある堅牢なシナリオを開発する段階に入りました。この時点で多くの予見プロジェクトは失敗します。それは、ソースとなるシグナルまでを紐づけて追跡することやや、シグナル、力、そして潜在的なシナリオの間に堅牢といえる関係性を示せないためです。

私たちの研究は MAXQDA を使用しているので、提案された代替未来を、「変化の力」のコード、発信元のシグナル、そしてオリジナルの文書に遡って、核となる問題、分析、そして誰がシグナルを収集し、誰がそれを分析したのかを記述したメモを添えて追跡することができます。これにより、元の分析者だけでなく、タイミングやシグナルの内容も含めて議論することができました。

図 9: 代替未来の自動コーディング

このプロセスにより、それぞれの代替未来を十分に説明する非常に豊かで理解しやすいシナリオを作成できました。

ステップ5: シナリオのインプリケーション

代替未来のコード化されたセグメントと MAXDictio の[対話型単語ツリー]と[文脈付きキーワード]機能を使用して、代替未来が顕在化する可能性のある豊かなシナリオを作成しました。チームは、収集した文書からキャプチャした画像と自分のアートワークを使用して、シナリオがどのように展開するか、そして影響を与えうるポイントがどこにあるのかについてのストーリーボードを作成しました。追加機能として、チームは「未来からの人工物」を作成することができました。これは、選択したシナリオの主要な技術や効果を表す図表や物理的なオブジェクトです。

これらのシナリオにより、クライアントは代替未来を非常に具体的に視覚化することができ、その空間を探索することができるようになりました。また、これがどのように脅威や機会になるのか、望ましくないシナリオの場合にはそれを緩和・防止するためにどのように対応・計画するのか、望ましいシナリオの場合には機会をつかむためにどのように計画・準備するのかを理解できました。

結論

ストラテジックフォーサイト(戦略的先見性)の方法論と MAXQDA の使用は、非常に効果的で効率的であることが証明されており、モニタリングと評価、品質管理、プロセス改善をストラテジックフォーサイトと統合し、衝撃に対するクライアントのレジリエンスを高め、機会を受け入れる機敏性を高めるという、私たちのヘルスケア改善ビジネスの中核となっています。

シグナル、変化の力、代替未来、そして最後に想像可能な成果物を含むシナリオの整然としたプロセスの集大成として、代替未来を具体的かつ想像可能なものにする思考様式へと顧客を導き、希望する未来が展開される可能性を高める現在の意思決定を可能にします。同様に、この思考プロセスは、顧客組織の思考をより柔軟にし、将来のショックに対するレジリエンスを構築することを可能にします。

Bibliography

Bishop, P. (2011, 8 22). Baseline Analysis: The Epistemology of Scenario Development.

About the Author

Matthew Loxton is a Principal Analyst at Whitney, Bradley, and Brown Inc. focused on healthcare improvement, serves on the board of directors of the Blue Faery Liver Cancer Association, and holds a master’s degree in KM from the University of Canberra. Matthew is the founder of the Monitoring & Evaluation, Quality Assurance, and Process Improvement (MEQAPI) organization, and regularly blogs for Physician’s Weekly. Matthew is active on social media related to healthcare improvement and hosts the weekly #MEQAPI chat. You can also read other guest posts by Mathew Loxton on Mixed Methods Research here in the MAXQDA Research Blog.

 

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