コーディング – 最適化、再考 – コーディング: MAXQDAによるエスノグラフィック・データ分析の研究事例

MAXQDA Research Blog 翻訳版

Guest Post by Aivaras Jefanovas (Monday, May 18, 2020)

これは、3回目で最後の#ResearchforChangeフィールドワーク・ダイアリーです。トナカイの牧畜・狩猟民が暮らす北ヤクティア、エヴェニーの小さなコミュニティにおける人間と動物の関係に関する博士課程の研究に、どのようにMAXQDAを適用してきたかを記しています。この記事では、以前の記事に書いた経験を振り返りながら新たな内容を追加ています。

博士後期課程プロジェクト「北ヤクティアのトナカイの遊牧民を調査する」におけるMAXQDAの活用を振り返る

私の調査戦略は、一時的に村に滞在し、彼らがトナカイの群れを維持しているタイガに戻るときには彼らと一緒に移動することで、トナカイ放牧民と一緒に遊牧生活を送るというものでした。私はフィールドワーク調査を、以下のようなエスノグラフィック調査手法に基づいて行いました。

私がフィールドワークの最初に直面した障害は、インタビューや観察データをすべてPCに書き留める機会がないことでした。そのため、手書きのメモや音声録音の方が、私のフィールドワークのデータ収集方法に適していることにすぐに気付きました。その上、メモやディクタフォンをポケットに入れて持ち歩き、「移動中」に観察したことを書き留めておく方がずっと簡単でした。さらに、私の対談相手は、これらの観察技術にすぐに慣れたようで、人々の日常生活の自然な流れを乱すこともありませんでした。

2019年10月に筆者が撮影した北ヤクティアの北極圏の風景

ここで付け加えておきますが、北極圏の気象条件は、控えめに言っても寒く厳しいものです。冬場は氷点下50度になることもあり、3月に入っても日中は-30度、夜間は-40度まで気温が下がることが多くありました。このような寒さの中でのデータ収集にデジタルソフトを適用することは不可能でした。

その結果、フィールドワークの後、私は膨大な量の異なる種類のエスノグラフィック・データを手にしました。例えば、私の母国語であるリトアニア語、ロシア語やヤクート語(現地の言語)の手書きのテキスト、多くの写真、そして何時間もの録音などです。さらに、私はアーカイブ資料の山を集めました。そして、これらすべての資料をどうやってタイプし直し、書き写すかという問題に直面しました。それには時間がかかりすぎることに気がついたのです。

MAXQDAによるデータ分析

幸いなことに、MAXQDA は、手書きのメモをスキャンしてコーディングしたり、写真をコーディングしたり、 MAXQDA の録音にトランスクリプト・モードを適用したりすることができました。さらには、クリエイティブ・コーディングやメモを使ったり、必要な情報の特定のセグメントを検索したりして、 あらゆる種類のデータを整理することを可能にしてくれたので、今回の質的研究には完璧な支援ツールとなりました。

次に、私がナラティブや自分の経験のメモなど、特定のタイプの文章を整理したり分析したりするために、MAXQDAのどのツールを利用してきたかを、ステップ・バイ・ステップでお見せします。

全てのデータをインポート

私が MAXQDA で見つけた最も論理的で時間を節約できる機能は、スキャンした文書をインポートしてコーディングするための素晴らしいオプションでした。これらの機能により、私は手書きのフィールドノートをインポートすることができ、延々と入力し直すという退屈な作業から逃れられました。さらに、同じようにして、アーカイブデータや論文や書籍の有用なセクションをアップロードしてコーディングすることができました。

スキャンしたフィールドノートの読み込みとコーディング、さらなる分析のための時間の節約

他にも、画像のコーディング機能や解析機能など、素晴らしいオプションがいくつかありました。以前の記事でも紹介したように、私が使用した写真のコーディング方法は、予想外の情報を発見したり、記憶を呼び起こしたり、フィールドワークで得た非常に微妙なディテールを再構築したりするのに役立ちました。このように、このエスノグラフィック・データを正確に分析したことで、シベリアの先住民の生活は、そのすべての謎と予期せぬ発見に満ちていることが明らかになりました。

例えば、トナカイの遊牧民に撃たれて木の上で死んだキツツキの写真を撮りました。拡大してみると、キツツキの羽がくちばしの中に入っていたのには驚きました。この観察は、ヤクティアの牧夫の伝統についての新たな疑問を提起し、私は対談者に説明を求め、研究のための新たなデータを得ることができました。このようにして、画像は時に自ら物語ってるのです。

MAXQDAで画像をコーディングしながら写真を拡大表示

フィールドの声を書き起こす

もう一つ、特筆に値する非常に重要なツールは、MAXQDAのトランスクリプト・モードです。私は、ヤクティア人の対談者から聞いた音声インタビューや口伝を書き写すのに非常に便利だと感じました。テープ起こしをしながら、新たに入力したテキストをすぐにコード化することができるので、テープ起こし作業が早くなりました。

さらに、MAXQDAは、トランスクリプトと録音が互いにリンクしているので、テキストとのつながりを失うことなく、作業中の音声ファイルの特定のポイントに素早くジャンプすることができました。これにより、重要な説明のエピソードに何度も戻ることができ、より深い分析を行うことができました。

MAXQDAのトランスクリプト・モード – インタビューをテープ起こしする

このように、私のフィールドデータの3分の1はインタビューや口頭での記録であり、「紙」にタイプしなければならなかったので、この便利なツールが私のフィールドデータの整理に重要な役割を果たしたことは間違いありません。次に、データのコーディングと博士論文の作成に移りましょう。

コーディング – 最適化 – 再考 – コーディング

フィールドワークのデータを最初に整理した後、エスノグラフィック・データを正確にコーディングし、分類する時が来ました。そのために、私は MAXQDA のビジュアルツール MAXMaps、コード間関係ブラウザ、クリエイティブ・コーディングを利用しました。

MAXMapsでコードシステムを最適化
  1. まず、MAXQDA の MAXMaps 機能を使って、異なるコード間の関係を可視化しました(上のスクリーンショットを参照)。これは、どのようにしてコードシステムを整理し始めたらいいのか、いくつかのアイデアを持っていた初期の段階で、特に役に立ちました。私は、すべてのコードを整理し、関連するコードを MAXMaps でリンクしました。
  2. 次に、コア・カテゴリと、私が「サイド」カテゴリと呼んでいる一旦脇に置いておいて後ほど分析するものを区別しました。そして、カテゴリを拡張するより多くのコア・テーマを見い出し、また、いくつかの関連するカテゴリをマージしてコードリストを整理しました。
コード間関係ブラウザで重複コードを可視化することで、自分の考えをより深く再考することができた
  1. 次に、MAXQDA の コード間関係ブラウザを使い、コードの共起数を調べることができました(上のスクリーンショットを参照)。さらに、近辺 (コード) 機能を使って、どのコードが互いに一定の距離を置いて存在しているかを調べることができました。このように、重複するコードの見直しにより、私のアイデアのうち、どのコードが繰り返し発生しているかを分析することができました – そして、それは、私のコードシステムを精査し短いものにするために、どのカテゴリをマージできるかを決定するのに役立ちました。
  2. そして最後に、クリエイティブ・コーディング・ツールは、私がコードシステム全体を改善するのに役立ちました(下のスクリーンショットを参照)。このツールの最も便利な点を挙げるとすると、クリエイティブ・コーディングのワークスペースで行ったすべての変更(例えば、階層順序の変更)が、自動的にコードシステムに反映されてることです。これにより、コーディングをやり直す必要もなく、コードを再編成する際にすべてのデータが自動的に転送されます。
クリエイティブ・コーディングは、相対的なテーマを集約して新しいテーマを生成することで、私のコードシステムを改善しました

さらに、もう一つ非常に重要なツールとしてメモを挙げなくてはなりません。私があらゆる種類のデータをコーディングしている間に、同時にメモを書くこともできました。そして、これらをエクスポートして、何度かの「ラウンド」を経て再コード化することで、自分のデータについて最高の洞察を得ることができました。

このテクニックは、私の記憶を呼び覚ますのに役立ち、結果的に追加の情報や新しいアイデアが生まれました。それだけでなく、この作業の結果は、私のフィールドデータの整然としたシステム以上のものとなりました。メモを書くプロセス全体が、アイデア、テーマ、そして最終的には論文の各章の見出しを呼び起こしてくれたのです。つまり、このプロセスが私の論文の基本構造をつくりあげたのです。

おわりに: タイガで狼の目に出会う

最後のフィールドワーク・ダイアリーでは、私の論文の中で、共有された風景の中での同居という意味での人間と捕食者の関係を説明するためのエピソードを抜粋して紹介したいと思います。また、私の経験に基づいた解釈を述べます。

以下で私は、オオカミの「知性」についての説明をしています。それは、北ヤクティアに住む地元の62歳のエヴェニーさんの実体験に基づく記憶です。彼女は幼い頃、両親のトナカイの群れを見守っていたとき、彼女の強さやどの程度抵抗するかを見極めようとしているかのようなオオカミの群れに遭遇したことを覚えています。

私の祖母は、肉食動物は神の創造物であり、尊重されるべきものだと教えてくれました。オオカミの悪口を言うのは良くない。しかし、当時、ヤクティアにはオオカミがたくさんいましたが、今の時代ほど攻撃的ではありませんでした。トナカイの野営地の周辺ではオオカミが遠吠えしていたので、子供たちは鉄板を叩いて大きな音を出し、オオカミを怖がらせたこともありました。また、子供たちにはフレアガンを持たせて、空に光を放って狼を怖がらせました。色とりどりの花火に見えて、とてもすてきでした。

ある時、夜にトナカイを見張った後、私といとこの女の人が野営地に戻って来たとき、突然トナカイのひづめからゴロゴロと音がしました。私はトナカイが何から逃げているのかを確認するために、いとこを後に残して、トナカイの ‘ウチャック’に飛び乗り走らせました。二匹の灰色の生き物が潜んでいるのを見て、それがオオカミのカップルだとわかったとき、私は恐怖でしびれました。オオカミは私に近づいてきて、近くに座って私をじっと見つめていました。あまりにも怖くて、その場に凍りついてしまいました。その目も、歯も、とても恐ろしくて、オオカミは私に向かってうなり声をあげていました。その間、トナカイの群れは前方に逃げていき、私は’ウチャック’とその場に残されました。

乗馬用の棒(トナカイに乗ってバランスを保つために使う)を持って立っていたのですが、逃げたらオオカミに襲われるし、近づいても襲われるだろうと思っていたので、決めかねていました。結局、私は棒を持ち上げて、叫んだり、地面を叩いたり、足を踏みつけてさらに騒いだりしながら近づいていきました。どうしてそんなことができたのかはわかりませんが、オオカミはその場に座り込んでいました、多分「何て馬鹿な子なんだろう」と思っていたのでしょう。

すると、オオカミたちはわずかに一歩下がり、私は自信を取り戻しました。’そうだ、私は人間なのにお前らオオカミは私を恐れているんだな ‘と思いました。そして、捕食者は後ろに下がって座り、しばらく見つめていましたが、また横に歩き、座って私が何をしているのかを遠くから観察していました。やがて、オオカミは丘の上を走り、下の谷に消えていきました。幸いにも、その時は捕食者がトナカイに全く手を出しませんでした。

この人間と捕食者の関係の話には、私にとって身近なものがあります。フィールドワーク中に一度、タイガの主と呼ばれるクマとの接近を体験しました。その時は、慣れ親しんだ場所が異質で危険なものに見えてくるような感覚が拭えませんでした。タイガに目があり、私を見ているように感じました。近くにいる別の存在の感じることができたのです(参照:Jefanovas 2019 et al. “Multispecies Households in the Saian Mountains”)。

つまり、他の生物を観察している、観察されているという感覚です。この感覚は他者私たちとコミュニケーションをとり、監視し、行動を把握し、時には私たちの幸福と私たち自身に脅威を与える捕食者的な存在による別の世界の中で生きているという認識につながります。このような個人的な経験に基づく考え方は、現地の人々のそれにも通じるものがあり、最終的には、エスノグラファーが調査対象とする遊牧民の生活をより深く理解することが可能になります。

川の土手にオオカミの足跡
2018年 筆者撮影

これらの説明で、私は、フィールドでエスノグラフィック・データを収集し、それを整理し、綿密な分析に取り組むという膨大なプロセスの最後に、共感と経験に基づくアイデアがどのようにして浮かび上がってくるのかを示そうと試みました。広大で不可解なフィールドデータを組み立て、分析するという、この長い旅の中で私を助けてくれたMAXQDAでの作業を楽しんでいます。MAXQDAはまた、創造的なプロセスにおいても私を助けてくれましたし、最も重要なことは、私の研究において新しいアイデアを生み出し、成功に導いてくれたことです 。

About the Author

Aivaras Jefanovas is a recipient of the 2018 #ResearchforChange Grant. He is a PhD student in Ethnology at Vilnius University Institute Of Asian And Transcultural Studies. His research project titled “Investigation of sociocultural relationships between humans and animals among Siberian reindeer herders and hunters” began in March 2018. Read his previous fieldwork diary entries to learn more about his amazing research in the Arctic:

 

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